近年、昆虫食が未来の食料危機を解決する手段として注目されています。その中でも食用コオロギは高い栄養価や環境への優しさから期待されていました。
しかし、2024年には徳島大学発の「グリラス」や長野県の「クリケットファーム」といった企業が相次いで破産し、昆虫食ビジネスの現状や課題が改めて浮き彫りになっています。
この記事では、食用コオロギをめぐるビジネスの状況や、企業破産の背景、さらに市場の課題について解説します。
まだまだ、差し迫った状況ではないために、需要が少なかったんでしょうね。
食用コオロギのベンチャー企業が破産した状況や理由は?
食用コオロギのベンチャー企業が破産した状況や理由は?
食用コオロギ企業が破産した状況
食用コオロギの生産や加工を行っていた徳島大学発のベンチャー企業「グリラス」は、2024年11月7日に徳島地裁に自己破産を申請しました。負債総額は約1億5300万円に上ります。同社は2019年に設立され、廃校となった美馬市の施設を活用して食用コオロギの飼育や加工を進めていました。
事業の一環として、コオロギ粉末を使用した食品を無印良品や大手コンビニで販売するなど、商品の普及にも努めていました。しかし、2023年春頃から事業を縮小し、最終的には生産施設を閉鎖。従業員も削減する中で事業継続を断念しました。このようにして、企業は経済的な行き詰まりにより破産に至ったのです。
破産申請時点では、同社の事業はすでに停止しており、製品の販売や新たな取り組みは実施されていない状況です。さらに、過去にはSNS上での批判や炎上も発生し、業績への影響が大きかったとされています。
食用コオロギ企業が破産した理由
食用コオロギ企業「グリラス」が破産した主な理由は、大きく分けて3つにまとめられます。
- 消費者の抵抗感と苦情の増加
コオロギを使った食品は、栄養価の高さや持続可能性が注目されていた一方で、多くの消費者からの抵抗感が強いものでした。特に学校給食でコオロギ粉末を使用した際には、SNSで安全性への懸念や批判が広がり、企業への苦情が相次ぎました。この影響で、商品開発や販路拡大の計画が次々と中止されました。 - 資金繰りの悪化
売上高が一定の水準に達していた一方で、相次ぐ設備投資や開発費用がかさみ、連続して赤字を計上していました。補助金の不採択や炎上の影響による販売不振も重なり、企業の資金繰りは次第に悪化していきました。 - 事業転換の失敗
食用コオロギに代わる新事業として「飼料用コオロギ」の大量生産を模索しましたが、必要な国の補助金を得られなかったため、実現には至りませんでした。この結果、新たな収益源の確保ができず、事業継続を断念することになりました。
これらの理由が複雑に絡み合い、最終的に同社は破産を選ばざるを得ない状況に追い込まれたのです。
2024年の2月にも破産したコオロギの会社が倒産
2024年2月には、コオロギを利用した食品を手がける会社が倒産しました。具体的には、長野県茅野市に拠点を置く「クリケットファーム」が、設立からわずか3年で破産手続きを開始しました。この事実は昆虫食業界にとって大きな話題となりました。
破産の主な理由は、事業の継続が困難になるほどの資金難です。同社の負債総額は親会社を含む3社で2億4290万円に達しており、これは中小企業にとっては大きな負担です。さらに、2023年12月の家賃支払いが止まり、翌年1月には弁護士から倒産手続き開始の連絡があったことが明らかになりました。
また、クリケットファームが手がけた商品は、コオロギパウダーを配合した食品でした。この商品は、ふるさと納税の返礼品として採用されるなど一定の注目を集めていましたが、最終的に事業を続けることはできませんでした。こうした状況から、昆虫食市場の成長にはまだ多くの課題があることが浮き彫りになっています。
食用コオロギ企業の破産が示す課題と未来
- 食用コオロギ企業が2024年に相次いで破産
- 主要企業「グリラス」が負債1億5300万円で自己破産
- クリケットファームも負債2億4290万円で倒産
- SNSでの批判や炎上が業績悪化の原因となった
- 消費者の抵抗感が市場拡大を阻害した
- 昆虫食の安全性に関する議論が深まった
- 高額な設備投資が経営を圧迫した
- 国からの補助金獲得に失敗し資金難に陥った
- 商品在庫の大量抱え込みが経営リスクを増大させた
- 昆虫食普及のための戦略不足が見られた
- 学校給食への導入が批判を招いた
- 飼料用コオロギ事業への転換が失敗に終わった
- 昆虫食の魅力よりリスクが注目された
- 食糧問題解決策としての潜在力が再考されるべき
- 昆虫食市場の成長には大きな課題がある